kuniyosi kaneko

原風景としての絵

金子先生との初めての出会いは一九八五年頃（僕がまだ小学生）だったと思います。とは言っても直接お会いしたのではなく、父親のコレクションの一つである加藤和彦さんのレコードジャケットでした。

レコードジャケットの中の紳士にじっと見つめられ、僕の幼い心の奥底に凍りつくように忍び込んできたもの。その眼ざしに身動きできなかったことを記憶しています。

あれから二十年後の二〇〇五年銀座の画廊で再会です。

画廊には幼い時に受けた衝撃とおなじ瞳を持もつ絵が飾られてありました。そんななか一つだけ傾いていた絵があって、それがどうしても気になり、そ～っと直していたら後ろから

「どうしたの？」と金子先生が。僕は叱られると思いながらも「傾いていたので直していました」と伝えたところ、金子先生は微笑みながら「そう。ところで貴方は何をされている方なの？」僕は「美容師をしています」そんなやりとりの後、金子先生は「あとで連絡するから電話番号を教えて」と。それからでしたね、アトリエへ行かせて頂くようになったのは。

金子先生はいつも「美意識がないと駄目よ！だから毎日勉強。髙橋君は外弟子なんだから！」と言ってくれながら、何本も何回も映画を見せてくれました。「色の組み合わせが良い」「立ち振る舞いが綺麗」陰影の大切さ、ちょっとした仕草がとても重要だったりと、何度も何度も教えてくれました。

僕の働いている、boy GooD girl（千葉県の市川駅近くにある美容室）に足が痛いにもかかわらず来てくれて、お店のみんなにも興味深いお話をしてくださったり、金子ダンスでたのしませてくれたりと、先生の優しいお心使いにお店の中はいつも笑顔でいっぱいでした。

そんな金子先生がこんなにも早く・・・・・。

いま、お店に飾られてある金子先生の絵が僕を見ています。その眼さしはあの頃と違って僕の背中を力強く見守ってくれています。金子先生の生き方や数々の言葉。大切に僕の胸だけに仕舞っておくのは勿体無いので、沢山の方々に伝えていきたいと思います。

先生本当にありがとうございました。

最後に金子先生とのお別れにと、修さんがメイクを手伝わせてくれました。一生忘れることのできない想い出をありがとうございました。

髙橋慎太郎。　美容室ボーイグッドガール一同。　

（ユリイカ　金子國義の世界より髙橋慎太郎部分引用）

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